谷川岳 東尾根

2026/3/15(日)

3時にベースプラザの駐車場を出る。一ノ倉沢に入ると少しずつ空が明るみはじめ、一ノ倉の壁がうっすらと浮かび上がってきて、思わず背中がゾクリとする。一ノ沢を詰める。時折ラッセルがあるので2人で先頭を回す。シンセンのコルで単独の男性と5人パーティーに追い抜かれた。

ガスで周りの山は見えない。第2岩峰は草付きを簡単なクライミングで処理。そこから急な雪稜をコンテでサクサク進む。有名なリッジトラバースは晴れていれば高度感がありそうだが、ガスなのであまり実感はない。第1岩峰は直登できそうだが、あまりそそられなかったので右の雪壁から念のためロープを出して巻いた。緩い雪壁を登り、雪庇の脇のスロープを登るとあっさりオキノ耳に出た。
天神尾根を下っていると次第にガスが晴れてきた。

一ノ倉沢一ノ沢
詰める
シンセンのコル
ガスに雪稜が浮かぶ
急斜面
リッジトラバース
第一岩峰を巻く
頂上直下
トップアウト
ガスが取れた

雪の状態が良かったこともあって少し拍子抜けだったが、日本の名クラシックというべきルートを登れて良かった。

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八ヶ岳 旭岳東稜

2026/3/7(土)-8(日)

初日は美し森駐車場から出合小屋までアプローチするだけだ。マカルーを背負って地獄谷沿いを行く。出合小屋の中にテントを張って、豆乳鍋を食べた後、快適に寝る。

出合小屋にて

2日目、5時に出合小屋を出発して旭岳東稜を登る。核心は五段の宮の岩登りだが、そこまでもナイフリッジの処理や凍った草付き登りがあり気が抜けない。

五段の宮はIV~IV+のクライミングになる。1段目が核心で、草付きにアックスを叩き込んで気合いのマントルを返して越える。クラックにハンドジャムが決まったり、微妙なトラバースをこなしながら2Pで登りきると爽快なリッジになる。この先は容易だが、念の為3Pスタカットでロープを伸ばして旭岳の山頂に出た。

ツルネ東稜を下り、地獄谷をダラダラ歩いて駐車場に着いた頃にはすっかり暗くなり、北斗七星が輝いていた。

樹林帯急斜面の処理
雪壁を登る
五段の宮
ナイフリッジ
爽快な雪稜
最終ピッチ
登ってきた
赤岳


残置も少なく、距離もあり、ゲレンデのような八ヶ岳西面とは一味違う山登りとしての雪稜が楽しめる。

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苧巻岳 猫耳を登る

2026/2/8(日)

苧巻岳は田子倉湖の北東に聳える顕著な双耳峰であり、只見の中心部からもよく見える。ある人はこの山を見て「ラクダ」と云い、ある人は「虫歯」と云い、ある人は「猫耳」と云う。僕は「猫耳」に1票投じさせていただく。

国道252号線の除雪終了点に車を停め、適当な斜面から東に伸びる尾根に取り付く。ふと振り返ると、高曇りの雲に隠れて遠慮がちな朝日に照らされた粉雪の煌めきに思わず息を呑んだ。一瞬のうちに心が洗われる。

只見の街を背にスカイラインをグイグイ進んで、核心部である左耳の下部に立つ。ここから1ピッチロープを出した。ブッシュが出ていて支点は豊富だ。wachinia氏曰く「ミニ戸隠」との事である。

気持ちのいい雪稜をコンテで進み、最後は雪庇をショベルで切り開いて左耳の頂上に立つ。浅草岳の展望を楽しみにしていたが、すっかり雪になってしまった。

急な斜面を下って、雪庇に気を使いながら藪混じりの雪稜をコンテで進むと右耳の頂上だ。少し休憩して、再び藪混じりの急斜面を下る。

積雪状態が安定していたため、沢を下降して下山したが、如何せん雪崩地形のため下降路は都度検討すべきだろう。

小戸沢が見える
只見の街が見える
しわしわ
気持ちがいい
田子倉湖
左耳の核心部
左耳のピークへ
沢を下る
いい雰囲気のブナ林

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南会津 大嵐山 東尾根 ~マリア様の囁き~

2025/3/22(土) ~23(日)

雪と藪の中で藻掻きながらモンキークライムをしているとき、ビートルズの「Let It Be」がずっと脳内再生されていた。なるようになる、そう考えながら憂慮に囚われる心を鎮めていた。

さて、金曜日に有給休暇を入れ、春分の日から4連休を取得した僕は、2泊3日で小立岩から山毛欅沢山に登り、小手沢山と恵羅窪山を経由して城郭朝日山のピークを踏み、黒谷の集落ヘ下りる計画を組んでいた。良きラインを引いた、と鼻歌交じりで日々を過ごしていたのだが、実家に帰っていたゴックン氏(無職)から食中毒になったとの連絡が入った。相方曰く土日ならどうにかなりそう、とのことだったので、1泊2日の山に転進しよう、となった次第である。

さて、湯ノ花温泉の南東に位置する旧舘岩村の秀峰、大嵐山の東面を地理院地図で眺めると、まるで嵐のようなゲジゲジマークがあることがわかる。ゴックン氏(無職)が横浜の某登山用品店にいた頃、僕が買い物ついでに彼を訪ねていくと、おおよそ終業後に近くのガストで山談義に花を咲かせながら時間を潰すことになるのだが、その時に「大嵐山の東面が気になる」という会話を交わしたことを思い出した。登山大系2番にもチラリと記載がある。登山大系2番をバイブルとして嗜む者として、一度確かめるだけでもやってみたい、という思いがあった。そんなことを考えていると、大嵐山はどうか、とゴックン氏から提案があった。考えることは同じだったようだ。自分の雪稜の経験が如何せん足りないことはわかっていたが、ひとまず賛成の意を示して、人知れず気合いを入れた。

そんなこんなで大嵐山へ向かう。鱒沢林道の入口に駐車できそうなスペースがあったので、車を停めて歩き始める。歩き始めると、沢の中にカモシカが佇んでいて、微動だにせずジッとこちらを見つめていた。

目と目が合う瞬間

すっかり春の陽気となった林道を汗を滴らせながら歩いていると、長靴姿のおっちゃんが歩いてきた。おっちゃんはこの辺で狩猟を嗜んでいるようで、動物の足跡を見に来たらしい。おっちゃん曰く、大嵐山の東面は地元民には「キネンボウ」と呼ばれているようだ。勝手な推測だが、おそらく「鬼念坊」だろう。なお、鱒沢林道は4月の初めに開通するのだが、この雪の量をこれから除雪すると考えると、とても4月の初めに間に合うとは思えない。

オッチャンと別れて先に進み、5kmくらい林道を歩いたあたりで、見繕っていた尾根に取り付くべく鱒沢を渡渉する。だいぶ景色が春めいてきたように思えるが、雪解け水の川はとても冷たい。ゴックン氏は余裕そうに渡っていったように見えたが、「もう少し距離が長ければ叫んでた」らしい。

鱒沢の渡渉

尾根に取り付くと急登になる。樹林を縫って標高を上げていく。なお、落とし穴にハマったりした。

ハマった

持病の喘息を発症しそうになり、薬を飲んで、ゆっくりと標高を上げていく。1313mのポコに上がると、ベールに包まれた大嵐山の東面がついに姿を現した。僕からすればだいぶヤバそうに見えるのだが、ゴックン氏曰く「なるようになる」らしい。まったく意味不明なので、半分くらい聞き流しておく。とりあえず、予定通りここでテントを張ることにした。峻険な大嵐山の山容を仰ぎ見る素晴らしい宿である。

大嵐山の東面が見えた
素晴らしいテン場

ゴックン氏は明日の偵察のために1430のポコまで行くというので、僕は喘息を鎮めるためにテントで昼寝することにした。喘息を患っていることは山を嗜む自分にとって致命的なデバフだと常日頃から考えている。どうしようもない持病なので、うまく付き合っていくほかない。

ゴックン氏が戻ってきて一息ついたら夕食を作る。今回はカレーうどんにした。シャウエッセンを入れたら最高に美味かった。富山出身のゴックン氏はヒガシマルのCMを知らなかったのだが、あれは東日本限定なのだろうか。

日本ハムに感謝

夕食後はお茶を飲み、少し微睡んでから眠りにつく。夜中は囂々と唸る風の音で何度か目が覚めた。

翌朝は4時に起床。風が強い予報だったので、一応様子を見ることを言い訳にして、30分遅れの6時半に出発した。1440のポコまでは樹林帯の急登をひたすら登る。1440のポコに出ると、峻険な大嵐山の東面が悠然と目の前に現れた。迫力のある佇まいに思わず息を吞む。ビビりの僕は少し心配になるが、ゴックン氏は「なるようになる」と言う。かく言う僕も、ここまで来て帰る選択肢はない。目の前の地形にただ向き合うのみである。

迫力ある大嵐山の東面

痩せたリッジをトラバース気味に通過するパートから幕を開ける。今思えば、このリッジにクライムダウンする一歩目が最もビビった瞬間だったように思う。何事も一歩目が肝心なのだ。まあ、時には踏み出して取り返しのつかないことになるようなこともあるかもしれないが。

リッジを通過した後、直登は難儀しそうな岩峰をトラバースして、樹林帯の斜面を攀じ登ったところでビレイステーションを作る。

【1P目】雪の斜面を登って藪と岩のミックス斜面に取り付き、藪を繋いで攀じ登っていく。ルンゼ状をモンキークライムでなんとか突破すると、目の前に雪壁が現れる。スノーバーと木で支点構築して終了。

【2P目】下から見て、第一の核心として懸念していた雪壁。しかしながら、テン場から見上げていた時ほど絶望感はない。ゴックン氏のリードで着実にステップを刻んでいき、あれよあれよという間に突破してしまった。「なるようになる」かもしれない、希望が見えてきた。

雪壁

【3P目】一応ロープを出したピッチ。小さな雪原を進み、緩い雪壁を登って終わり。

【4P目】核心ピッチと思われる。スラブ状の雪壁からモンキークライム。リードのゴックン氏は右往左往していたが左から取り付き、随分と時間をかけて除雪してるな、と思ったらトンネルを掘っていたようだ。突っ張りで登ると、丁度良い感じに山頂へ続くスカイラインの基部に出た。

トンネルを抜ける

【5,6P目】一応ロープを出す。気持ちの良いスカイラインを進み、雪庇を潜って上に抜けて終了。

気持ちの良いスカイラインを進む

最後は歩いて大嵐山の山頂に立つ。なんと、登れてしまったようだ。だいぶ相方頼りの山行だったが、彼のように力があれば大抵のことは「なるようになる」のだと、そう思った。山は面白い。パンフレット的なアルプスの稜線歩きも勿論楽しいが、不確定要素の強い自然に対し、自らの能力を尽くして突破していくことが、山を楽しむということなのだと、そう考えた。そのためには自らの能力を上げなければならない。普段からコタツでふて寝しながらアニメをダラダラ観ている場合ではないのだ。

山頂

雪の様子を見て、帰りは登山道沿いの沢を下る。次は夏にのんびりハイキングに来るとしよう。

湯ノ花温泉から林道を5km歩いて、車を回収する。湯ノ花温泉で一息ついて、車に乗り込むと相方からのBGMのリクエストはビートルズだったので、とりあえず「Let It Be」を流した。なるようになるのである。さて、家に帰ってコタツでカップヌードルでも食べながら、ダラダラとアニメでも観ようじゃないか。

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