2026/3/29(日)
登山大系2番の川内山塊のプロローグは傑作だ。「絶望的な様相」と形容される険悪な川内の谷への畏怖、もはや諦めの境地に至っている山蛭、蝮、薮蚊、虻への苦悩の吐露、それでも川内という山域に涎を垂らし、唾を飲み込むような情欲に唆られる。亀田山岳会の川内への愛が存分に詰まっている銘文だ。
さて、川内の険谷に向かう前に、山域の概念を把握しておきたい。川内山塊の東端、残雪の日本平山を訪れた。
登山口にほぼ雪は無い。植林帯を歩く。少しばかり行くと、足下にカタクリとキクザキイチゲが寝ぼけている。周りの植生が広葉樹林に変わると、少しずつ残雪が出始める。イワウチワは元気に目覚めているようだ。


五十母清水の先で雪が繋がり始める。人分山への登りで振り返ると、阿賀野川から上がってくる靄が集落を覆い隠し、山だけが浮かんで水墨画のようだ。奥に五頭連峰がぼんやりと宙ぶらりんになっている。


人分山を越え、のんびり進む。徐々に植生がミズナラからブナになる。大池のあたりは地形が複雑だ。ウロコ板が有効だろうか。

大池からひと登りで天空回廊になる。気持ちいい稜線歩きで日本平山のピークに導かれた。川内の山々を見るが、春霞で山座同定がやりにくい。矢筈岳に至っては見えない。地図を見ながらなんとなく位置関係を把握する。



春山の下山はサクサクだ。といってもこの山は割と長い。マンサクが咲く春山を3時間くらいかけて登山口に戻る。朝は寝ぼけていたキクザキイチゲが欠伸をして背伸びをしていた。些細な季節の流れが嬉しい。春の穏やかなハイキングは幸せだ。



登山大系2番の川内山塊のプロローグとはかけ離れた穏やかなハイキングだった。先が怖いが、概念はぼんやりと把握できた。今夏は山蛭、蝮、薮蚊、虻が蠢く険谷で、歯ぎしりしながら遊ぶとしよう。

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